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週刊新潮 十月二十六日号
「石原良純の楽屋の窓 」
172回
イェーイ、イェーイ

「知恵が欲しくば、賢人の言葉に耳を傾けよ」
 二十一日の土曜夕方スタートする新番組『ザ・クイズマンショー』(テレビ朝日)は、今すぐ役立つ情報をクイズ形式で伝える新機軸のクイズ番組。
 四人の解答者は、いずれもその日のテーマに精通した、いわば賢人。四人のクイズバトルを目のあたりにするだけで、今まで知らなかった情報が、みるみるうちに脳裏に焼き付いてゆくという趣向だ。
 七0年代のクイズショーを思わせるセットに、懐かしのディスコサウンドに乗って司会の僕は、ラッパズボンにタイトジャケットのポップな姿で登場する。
 両手を挙げて「イェーイ」。ピッとサングラスを弾く僕がいけてるのか、いないのか、当人には判断がつかぬ。「元気そうで、いいじゃない」というディレクターの言葉を信じる他ない。
 そう、新番組には元気が一番。そんな元気の大切さを改めて教えてくれたのが、東京ドームの、SMAPのコンサートだ。
 スタンドとアリーナ席を埋め尽くす五万人の観客に、まず、度肝を抜かれる。
 暗転して公演スタート。五人のメンバーが宙づりからステージに降り立てば、会場はたちまち熱狂の嵐に包まれた。
 おなじみのヒットメドレーやダンスは、もちろん見事だが、僕が一番驚いたのは、彼ら自身が自らのステージを楽しむ笑顔とエネルギーだ。
 五万人の耳目をしっかりと引きつけておいて、彼らはそれに倍するエネルギーを広大な会場の隅々にまで送り返す。エネルギーを受け止めた観衆は、彼らと一つの時間と場所を共有する安心感に包まれて、限りない声援を彼ら五人に送る。
 リーダーの中居正広さんは、このコンサート期間中に肋骨の骨折や、肉離れというアクシデントに見舞われたと聞く。本来ならば身動き一つとれない体でも、中居さんは笑顔を絶やさずに歌い踊り、ステージ狭しと走り廻っていた。その力の源が、中居さんを応援する五万人の想いなのは間違いない。
 SMAPのメンバーは、観衆に元気を与えると同時に、お客さんから元気をもらう。元気のキャッチボールは、そのままSMAPの力となる。時に番組で一緒になるメンバーの一人ひとりが、ここぞという時に発揮する底力の秘密を僕は東京ドームで垣間見た。
 元気が一番。笑顔が一番。僕も「イェーイ」と両手を挙げて新番組の収録に臨む。
 放送日の三日後に始まる番号ポータビリティ制度を見据え、番組の一回目のテーマは・携帯電話・。
 今から二十年前は携帯電話ではなくて自動車電話。『太陽にほえろ』の撮影現場で、スモークガラスに覆われたクーペタイプのベンツの運転席で自動車電話を小首かしげて肩にはさみ、レノマのポーチからシステム手帳を取り出して何かメモする神田正輝さんは皆の憧れの的だった。
 自動車電話は通話料金が高いと聞いていたから、おいそれと「貸してください」とは頼めない。ある時、ハイヤーでおもしろ半分にかけた自動車電話の料金メーターは、百円単位でズンズン上がったのを覚えている。
 僕の車にも、自動車電話がやって来たのは、芸能人の見栄。ところが公衆電話を探して車を止めずに済む優越感は僅かの間のことだった。すぐに自動車電話から携帯電話へと時代は移り、通話料金も格段に値下がりした。
 以来、どちらかといえば、携帯電話ギライとなった僕は、携帯を有効利用しているとは言いがたい。iモード、iアプリはおろか、メールだってろくに使えやしない。
 よしっ! 僕は何も知らない視聴者の代表として、「イェーイ」と元気にスタジオに立つ。

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