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週刊新潮 四月三十日号
「石原良純の楽屋の窓 」
296回
さあ、はじまるよ

 休みをうまく使えば十二連休。カレンダーに恵まれたゴールデンウィークが、いよいよ始まる。
 アクアラインの通行量が倍増したと、ニュースが伝えている。僕は、ゴールデンウィークのトレンドが、南房総にあるのではないかと睨んでいる。最近に収録した『ぴったんこカン・カン』(TBS系・金曜夜)も『出没!アド街ック天国』(テレビ東京系・土曜夜)も南房総が取り上げられた。
 アクアラインを渡った木更津は、言わずと知れた潮干狩りのメッカ。まだ冷たい海の水が、夏を思わす暖かな日射しに包まれると心地良い。泳ぐには早いこの時期は、波打ち際で海を楽しむのがベストだ。
 館山自動車道の延伸は、南房総へのアクセスを飛躍的に手軽にした。フェリーに乗って出かけたマザー牧場も、富津中央インターで降りれば近い。
 我が家にとってマザー牧場といえば、ブタレース。親子ペアを組んで子ブタをゴールに追い込む。子ブタに驚き棒立ちの長男・良将と出場し、見事にビリだったのは二年前のことだ。
 レースに負けたことを一番悔しがっていたのは、なぜかオムツをしてお兄ちゃんを応援していた二つ年下の長女・舞子。この春、幼稚園に入ったばかりの彼女は、兄の仇を取ってやると、この休みにマザー牧場へ連れていけと僕を責付く。
 鋸山のロープウェーにも乗ってみたい。よく晴れた日に、東京湾の向うに房総半島を眺めると、切り立った山々が見える。鋸山は江戸から昭和まで続いた石切り場。跡には地獄覗きの展望台や大きな石仏がある。
 南房総・館山と東京の年平均気温は、ほぼ同じ。それでも館山を南国と感じさせる秘密が鋸山の存在。
 鋸山の標高は、三百二十九メートル。そこから東へ連なる山々もそこそこの高さ。だが、これらの山が冬の季節風を遮り、南房総をより暖かくしてくれる。
 鋸南町の保田漁港は、地魚の宝庫。漁港のほんの沖合に仕掛けられた定置網には、大小様々な魚が入る。小魚が目一杯入った大きな網を引き上げたら、その奥には漁師が”金庫”と呼ぶ小さく仕切られた網。ここには、大型の高級魚が追いこまれる構造になっている。
 漁港の岸壁で水揚げされた魚が仕分けされていくのは見ているだけで楽しい。
 さらに一つ南に下った旧富浦町は、日本一のサザエの街と僕は記憶している。お土産にもらったサザエの重みの記憶が、十年経った今も腕に残っている。
 房総半島先端の館山は、小学校四年生の夏に海浜学校で訪れた思い出の場所。
 初めての泊まりで不眠症癖の僕は、寝息を立てる友達から独りはぐれ、窓越しに眺めた夜の海には、理科の先生に聞かされていた夜光虫が波打ち際にキラキラ輝いていた。 
 刺激を与えると発光物質を分泌するプランクトンや、”海ほたる”も観察できる。
 アクアラインの人工島は、館山の海の微生物から名付けられたのだ。
 関東大震災で地盤が隆起して地続きになってしまった沖ノ島には、南国の自然が溢れている。洲崎の灯台をかわせば四季を通じて花咲き誇る房総フラワーライン。平砂浦海岸には大きな砂丘があり、今はサンドスキーのメッカとなっている。
 やはりゴールデンウィークは南房総。違う。ゴールデンウィークは、世界卓球。
 四月二十八日から『世界卓球2009横浜』が開催される。昨年の中国・広州大会で見事銅メダルを獲得した日本選手に期待が集まる。ホームゲームという地の利を活かして、日本選手にメダルのチャンス。
 僕は、テレビ東京独占中継のメインキャスターを、三年連続で務める。
    *
「楽屋の窓」を、六年間、ありがとうございました。また、いつか。

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